EL-QUANGO / LOST MOMENTS
「ゆるやかなリズム、ビートはキープ」──DJカルチャーが用意するのは、穏やかな生活のための空気感もあるのだ。そんなことを感じる本作は、昨夏、新レーベル〈Search of MANY〉を設立したEL-QUANGOによるミックス。1990年代初頭より、下北沢スリッツのスタッフやKING OF OPUSのメンバーを経てマイペースに活躍してきた、その音楽性がじわりとにじみ出ているのではないだろうか。 ミックスの頭を飾るのは〈Search of MANY〉の第一弾となった7インチをリリースしたロボ宙のMC、実はこのイントロのビート、EL-QUANGOとも生前親交のあった故マジアレ太カヒRAW参加の秘蔵音源。マジアレ太カヒRAWと言えば、14年の時空を超えて、2007年のアルバムがまさかの2021年にLP化で再発見&フレッシュな衝撃を与えたスマーフ男組のメンバー。そんな彼の貴重な音源からスタートするのだ。ここにはじまる1時間はブレイクビーツやエレクトロ、レゲエ、ダウンテンポのグルーヴがダブのベースラインを伴って進み、適度にダンサブルで適度にリラックスした、アゲすぎず落とし過ぎずなライトさも忘れない。その塩梅の良さが心地いい空間を作り出す。中盤には、前述の〈Search of MANY〉のロボ宙とのファースト・リリース、その未発表のヴァージョンも収録されている。ちなみにこの曲のもともとのトラックはジャパニーズ・テクノ黎明期よりPC-8やInterferonなどで活躍したハゼモトキヨシ、そのアクチュアルなプロジェクト、Sigh Societyの作品を元に作られた“ヴァージョン”で、7インチではロボ宙によるラップのAサイドと、インスト・ヴァージョンとなるBサイドにわけられていた。ここではその両方の要素で構築されたエクステンデッドで未発表のロング・ヴァージョンが収録されている。またミックス最後にはKING OF OPUSこと、最近では本人名義でのギター・アンビエントなども発表した朋友、Naka Tomizawaのメロディカによるこちらも未発表音源となるアウトロを収録、残像をかき消すかのようにして本ミックスは終わりを告げる。 OFFをONする、そんなゆるやかさとダビーな余韻が交叉する、マイペースへと“戻す”ミックス。生活と仕事、日常と非日常、リラックスと緊張、そんな高低差がどこまでも地続きになってしまったポストコロナ禍の、パーソナルなチルアウトを引き寄せるダウンテンポ・ミックスとも言えるかもしれない。 聴き終えると、おそらく反芻するように、ロボ宙のリリックが頭をループするだろう──「今日はどんな日に?」 (河村祐介) 冒頭のフリースタイル具合にやられたのも束の間〜自分の中に存在するニューウェイビィ〜な部分が完全に目を覚まして、気がつけば記憶と時間がDUBWISEされてました。 ひんやりとハッとさせられ静かに刺さる珠玉のMIX。 (KEN KEN〈KEN2D SPECIAL/URBAN VOLCANO SOUNDS〉) 例えばダンスミュージックの12インチのB面2曲目に入っているような、 レコードディギンの岩間に隠れた徒花 だが奇跡的に普遍的な魅力を持つ楽曲たち 通底するDUB感覚 サブスクAIからは導けない音楽愛に満ちたこのMIXは形にして残すべきだと思いました。 (NOOLIO〈ARRROUND Wicked Sound Maker〉) Selected & Mixed by EL-QUANGO (Last Moments) Recorded at 404 ANNEX in End of Summer 2021 Mastered by HACCHI at Plum Hills Basement Cover Concept by EL-QUANGO Design by REI NOMURA Format:CD Label:ARRROUND Wicked Sound Maker (JP)