宮里千里 / 琉球弧の祭祀 - 久高島 イザイホー
沖縄/那覇の宮里千里氏が1978年に録音した、今では伝承が途絶えてしまった祭祀「久高島イザイホー」の生々しい音源が、夏の大△などでも活動するサウンド・インスタレーション作家、大城真(原音テープの質感を生かしたというマスタリング仕事もストイックでイイ感じです!)のレーベルBasic Functionから渾身のリリース!!! 沖縄特有の島国の旋律はもちろんですが、それより日本の太平洋沿岸の古代原風景〜黒潮沿岸全域に顕著な、民間信仰トランス・ムーブメントを確認できる貴重な録音だと思います! これは、2016年音楽史に孤高/燦然と輝く、メモリアルな記録発掘作業ではないでしょうかっ! ハードコアなリスナーや、祭儀系フィールド・レコーディングに興味を持つ方には、是非ともチェックして頂きたい大スイセン盤!!! 沖縄本島東南端から5キロほど離れ、古くから「神の島」として知られる久高島。そこで12年に一度密かに行なわれ続け、今は途絶えてしまった神女たちの就任式「イザイホー」の1978年に行なわれた最後の回の記録。沖縄〜アジアの録音記録を40年以上にわたって続けてきた民俗祭祀採音者・宮里千里氏による録音&本人解説付き。 神女たちの生々しい歌声、祈り、そして鬼気迫る祭りの場を聴く事ができる貴重な音源。 北の奄美諸島から南の宮古・八重山で成る先島諸島まで、いわゆる琉球弧といわれる沖縄の島々では現在でも古くから続く祭祀が年間通して数多く行われてます。 そういった島々の中でも「神の島」として知られているのが久高島なんですが、イザイホーはその久高で1978年まで、12年に1度の周期で数百年続けられてきたお祭りです。 沖縄の祭祀の多くは「ノロ」や「ツカサ」といわれる神女たちが神と人との間に立ち執り行われます。イザイホーは久高島の女性たちが神女になるためのいわゆる就任式のような儀式で、そういったしきたりが故重要視されてきました。 神女になるための条件が厳しく、また島の人々の生活が現代的なものにシフトしていく中でなり手はいなくなり、1990年以降イザイホーは行われていません。 これが嘆くべき事なのかどうか自分にはわからないですが、僕の生まれた年でもある1978年と比較して僕らの今の生活や世界の見え方は大きく違ったものになっていて、そして、それがこの先もすごい速さで変化していくだろう事を考えるとこの祭りが続けられていた数百年間は特別な時期だったんじゃないかと思います。 島の生活の中から生まれて長い間培われた信仰が持つ力や重みみたいなものがこの音源に収められている神歌や祈りに宿っているのを、その編集やマスタリングの過程を通して生々しく感じてきましたが、それをこの音源を手に取ってくれる人らと共有できたら嬉しいです。 この音源は、冒頭でも書いた宮里千里さんが写真家の比嘉康雄さんとともに、お祭りが執り行われる何年も前から久高に通い続け、島の人々、特にイザイホーを先導した神女の西銘シズさんと対話を重ねるなど、多くの調査を行った上で録音されたものです。そういった現場の空気を感じた千里さんの視点をまとめるように努めました。 また、千里さんの熱のこもった解説も含まれているので、このお祭りを知ってる人にとっても知らない人にとっても発見できるものがあると思ってます。 ぜひ聴いてほしい一枚です。 (大城真/Basic Function) トンでもない音源があったものだ。 民俗学的にあまりにも貴重なものであることは言うまでもないが、ここに収められている音自体がトンでもないのである。ひとつひとつの音そのものに霊力が宿っているんじゃないか――そんな気がしてきて、ぼくは思わず音源の再生を止めてしまった。聴いているうちに神々に対する畏怖の念が込み上げてくる、そのような聴取体験はなかなかできるものではない。 それにしても、声とリズムのハーモニーのなんと豊かなことか。途方に暮れるほどの長きに渡って続けられてきた祭祀ゆえの圧倒的なダイナミズム。自身の身体を通じ、歌とリズムを活き活きと表現する女たち。 人はこんな声を出すことができるのか。 こんなリズムを生み出すことができるのか。 音盤のなかに封じ込められた祭祀の空気がまた、ゾクゾクするほどに濃い。 これぞ衝撃映像ならぬ、衝撃音源である。 1978年12月、「神の島」である久高島を舞台として、神女を産み出すために行われた儀式「イザイホー」。その伝統が途絶えてから38年、奇跡の音源がついに蘇る。 大石始(ライター/エディター) 宮里千里(ミヤザトセンリ): 1950年、沖縄那覇市生まれ。民俗祭祀採音者・エッセイスト。 1970年代初頭より南島の音の記録を行い、また、沖縄・奄美諸島の祭祀・行事に関する膨大な音のアーカイブを作成している。これまで発表された音源として里国隆「路傍の芸」、大工哲弘/大工苗子&スカル・トゥンジュン「ガムラン-ユンタ」、 マリカミズキ「シマウタ ブンブン」等がある。 著書には『沖縄あーあー・んーんー事典』『シマ豆腐紀行』(ともにボーダーインク刊)、『ウーマク!』(小学館)『沖縄 時間がゆったり流れる島』(光文社新書)がある。趣味は、平敷屋エイサー鑑賞。シマ豆腐を食べること、アジアあっちゃー。 1. アサンマーイ 2. ニラーハナー遥拝 3. ウプティシジ 4. ユクネーガミアシビ 5. ハシララリ アシビ 6. アリクヤー 7. 西銘シズ・比嘉康雄の対話 8. ナーリキ 9. グキーマーイ 10. 区長挨拶 録音・文章:宮里千里 写真:比嘉康雄 マスタリング:大城真 デザイン:竹田大純 Format:CD Label:Basic Function (JP)