MASAAKI KIKUCHI / FORMULA
菊地雅晃はまごう方なきウッドベース奏者である。弦を操る才人である。 強者相手の格闘は数知れずこなしてきた。そこまでジャズを身体に染み込ませた彼が、なぜこんなにも無垢な電子音を作りだしてしまったのか。 その事実に人は戸惑うかもしれない。しかし、彼は突然変異のごとく現われた高性能なフォーミュラ・マシンなのだ。そこには予め全てが組み込まれている。高性能なマシンを前にしては、何もかもがいま一度リスタートされてしまう。その電子音は、ストックハウゼンに挑んだマイルスと変わらず野心的であり、ドン・チェリーと共振したジョン・アップルトンと同じく原始的であり、ジョン・ケージとサン・ラの出会いそのものの荒唐無稽な美しさをもっている。生まれ出るどんな電子音も平気で手掴みにして、ダイレクトに響かせる。その手業は、ヤワな音響派気取りを驚嘆させることだろう。 ウッドベースのボディの鳴りすらも電子の海に溶けていく。 原雅明(SOUP-DISK) 本来はジャズのウッドベース奏者で、小沢健二からダブソニックまで、ありとあらゆるセッションをこなす、菊地雅晃の電子音楽/ミュージックコンクレート作品のみをコンパイルした作品集です。 現代音楽にも深く精通する彼は、常日頃から電子音楽/ミュージックコンクレートの制作を少数のエレクトロニクス機器でライフワークのごとく制作しており、ウッドベースの電子変調を含めると膨大な量のライブラリーになりますが、今回はあえてウッドベース部は使用せず、純度の高い電子音楽/ミュージックコンクレート部を抽出しました。 これは、昨今の「音響派」ではなく、脈々と40年以上も続く電子音楽の最も新しい作品といった方がいいでしょう。 Format:CD Label:ZERO GRAVITY (JP)